何のために能力開発を行うのか
能力開発の話をする前に、何のために能力開発を行うのかという話をしなくてはなりません。
企業は何らかの目的を果たすために存在しています。そして企業内の組織とは、この目的を果たすために必要な機能を委譲されている集団と定義することができます。
つまり、組織の最小単位である職場とは、上位の組織にどのような機能を委譲されているのかをよく理解しておく必要があります。
例えば営業部隊の末端の営業所組織がAという製品群を販売し、それを拡大することを担っているとしましょう。その組織の責任者であるBさんは組織の機能について説明を求められた時にどのように答えればよいのでしょうか?
「Aという製品群を拡販することです」
これでは丸っきりだめです。
なぜなら、これは手段を目的だと言ってしまっているようなものだからです。
「拡販」も機能といえば機能ですが、その拡販を以って、上位の組織に対してどのように貢献し、その貢献結果の集合体である上位組織の貢献が企業が達成しようとしている目的やその途中段階目標の達成に繋がっているのかどうかが全く説明されていないからです。
つまり、組織の最小単位である職場であったとしても、
企業の存在する目的 >機能により分化された組織目標 >さらに細分化された組織の目標
として構造的に説明できるようになることが大切です。
そして可能であれば、その職場が「数年後に目指す姿」をメンバーと共に描き出してみることをおススメします。
さらにそれを個人の目標に落とし込んでいくと企業の存在目的から個の目標設定までが入れ子構造となることで軸が定まって成果発揮しやすくなるのですが、それはまた別の記事でお話したいと思います。
(マトリョーシカ理論と名付けています。)
この記事を読んでいただいている方の職場には、階層構造を持たずに数名で構成されているところもあるかもしれません。こうした場合は、その職場が「数年後に目指す姿」だけでもメンバーと共に描き出せると、将来のなりたい姿のイメージを共有することができると思います。
目指す姿と未来の組織図
ここまでできれば、「数年後に目指す姿」を実現するためには、その時に組織がどのような状態になっていなければならないかを具体的に描くことができると思います。
この時に重要なのは「今いる人」のことを一旦忘れて、どんな機能を発揮してもらうことが必要なのかを考えるということです。プロ野球やプロバスケットボールに当てはめて考えてもよいと思いますが、「3年後に優勝するにはこういう布陣が必要」ということを、今いる選手を前提にしないで考えるというようなイメージです。
(プロスポーツ界が実際にこういう運用をしているかどうかはわかりません。)
未来と現在の組織図のギャップとその充足
ここまでで、実現したい未来の組織図ができました。
ここまで出来たら、その組織図と現在の組織図を比較してみましょう。そして、出来るだけ事実ベースでギャップを可視化していきましょう。
そのギャップのうち、「人」の要因が不足する部分についてどのように充足していくかを検討することになります。検討すべきは、「今いる人で充足する」「今いる人の能力開発で充足する」「今いる人では充足出来ないので外部から充足する」の3点です。
もうお分かりかと思いますが、これに対応する手段が次の通りです。
- 今いる人で充足する・・・配置転換(現状維持を含む)
- 今いる人の能力開発で充足する・・・能力開発による配置転換
- 今いる人では充足出来ないので外部から充足する・・・採用
ようやく「能力開発」という言葉が出てきました。
もちろん個人が今までできなかったことができるようになるための「自己啓発」「自己研鑽」が行われることについては何の異論もありません。
一方で、組織として「能力開発」と言う場合には、未来の組織目標を達成するために、現在者にどのようになってもらわなくてはならないかを可視化し、起案し、共有し、実現するという観点が不可欠と考えています。
まとめ
まとめておきましょう。
- 組織の最小単位は企業の目的を果たすための機能の最小単位である。
- その最小単位の機能を明確化し、目指す姿をメンバーと共に設定する。
- 組織目標を達成するために、機能をベースにした未来の組織図を作成する。
- 未来と現在の組織図のギャップを事実ベースで可視化する。
- 可視化されたギャップを元に、「人」要因を解消する施策を起案する。
- 起案された施策の「今いる人の能力開発で充足する」の部分が「組織の能力開発」である。
今後、私が発信する「能力開発」については、これらを前提にしたものとしてまいりますのでよろしくお願いいたします。
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